日常に点在する様々なレイヤー(layer)
レイヤー(layer)とは直訳すれば“層”ですが、日常の様々な分野でこのレイヤーという言葉が使われています。ファッション業界でのレイヤーといえば“レイヤードスタイル”つまり“重ね着”のコーディネートを指します。美容業界でいえばヘアスタイルに段をつける“レイヤー”。理容室ではあまり耳にしない言葉かもしれませんが、美容室にいけば“レイヤーを入れてください”などと常用語として使われています。。
またグラフィックソフトウェアなどでは、複数の層ごとに作成したデータをセル画のように重ねて一枚の画像を作成しますが、この層が“レイヤー”と呼ばれます。
ここで、この3つの分野のレイヤー(layer)をネイルアートの世界に置き換えて考えてみましょう。
ファッション業界におけるレイヤーはネイルでは“塗り重ねる”こと、つまりデザインを描くために上に上にと色を塗り重ねていくことにあたります。また、美容業界におけるレイヤーは立体感、つまりネイルでは表面に凹凸をつけたり、ストーンなどで装飾することにあたるわけです。
ではグラフィックソフトウェアで使用されるレイヤーはどうでしょうか。つまり複数の層ごとに役割があり、役割をもった各層を最終的にセル画のように重ね一枚のデザインとして表現するということを爪の上で再現するということです。従来はネイルにおいてこういった概念は存在しなかったですし一見不可能かのように思えます。しかし、これを可能とするのがアエーブラシによる“レイヤースタイル”でデザイン構成の基本構造的にもグラフィックソフトウェアのレイヤー概念ともっとも近いと言えます。
グラフィックソフトウェアにおける“レイヤー”の基本構造
エアーブラシのレイヤースタイル云々の前に、まずはグラフィックソフトウェアのレイヤー構造の基本を簡単にでも理解しておく必要があります。上の画像のようなファッション誌の表紙、普段何気なく目にしていますが、このような写真もグラフィックソフトウェアのレイヤーによって構成されています。大まかにレイヤーごとに分けると、背景写真のレイヤー、雑誌タイトルの文字レイヤー、モデルの写真レイヤー、誌面左の文字レイヤー、誌面右の文字レイヤー、厳密にはもっと細かいでしょうが、ここではわかりやすく5層とします。
このように各レイヤーがそれぞれ役割を与えられて、最終的にそれが一枚に重なった時にはじめて、それぞれのレイヤーが意味を為し、一枚の作品が完成するという仕組みです。この他にも、一見普通の風景写真のようなものでも複数のレイヤーから構成されているものがあります。
空、雲、建物、人物などがそれぞれ別のレイヤーで作成されそれらが最終的に重なった時に一枚の風景写真のように見えるのです。
両者ともに、どのレイヤーが前面で、どのレイヤーを背後にしたいのか、そしてそのレイヤーにはどのような役割が付与されているのかということを明確に理解する必要があります。このようなグラフィックソフトウェアの基本的なレイヤー構造を理解することがエアーブラシアートにおける複雑なレイヤー構造を理解するための近道となるのです。
エアーブラシにおけるレイヤースタイルの基本概念
基本的にレイヤー構造のエアーブラシアートを作成する際には展開図が欠かせません。 イメージしているデザインは何層で構成されているのか頭の中で分解しレイヤーの順序を定める必要があります。慣れないうちはレイヤーごとに紙などに書き出しても良いでしょう。
一番わかりやすい例としては上記の写真のようなカモフラージュ柄、これは代表的なレイヤースタイルのエアーブラシアートです。ハンドペイントで塗り重ねていくのであれば、下地になる色から順に書いていけば良いでしょうがエアーブラシの場合は色毎のレイヤーに分解して考えます。
この写真ではライトグレー、グリーン、ダークグリーン、ブラックの4層に分解します。そしてそれぞれのレイヤーにどのような役割、つまりそのレイヤーではどのような形で色を残すかという役割を付与します。
そしてレイヤーの順序を定めて全てを重ねることでカモフラージュ柄としての形を為すわけです。ただ注意しなければならない点は、エアーブラシのレイヤー構造はグラフィックソフトウェアのレイヤーの表示順序と全く逆ということです。
グラフィックソフトウェアの場合は前面に表示させたいレイヤーは当然一番上になりますが、エアーブラシでレイヤー構造を構築する際には一番上に表示させたい色は最下層になるのです。写真のカモフラージュ柄では視覚的には最下層からブラック、ダークグリーン、グリーン、ライトグレーの順で柄が重ねられているように見えますがエアーブラシでの手順はライトグレー、グリーン、ダークグリーン、ブラックの順で全く逆の手順で作成する必要があります。つまり、ライトグレーが一番表面に描かれているように見えますが実際は最下層ということです。
従って、作品の仕上がりから逆算してレヤーごとに役割を付与していくことが非常に大切であり、この概念を理解することで様々なデザインをレイヤーで捉えることができるようになります。日常的にアイキャッチしたデザインを常に頭の中でレイヤーごとに分解し、展開図をイメージするクセをつけることでエアーブラシのレイヤースタイルがより身近なものとなるでしょう。
大塚翔太(3D Attacker)
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