脳が美しいと定義する理想曲線と理想直線
私たちは沢山の“もの”に囲まれて生活しています。住居の中を見渡すだけでも様々な形状の“もの”が存在します。どれを例にあげてもほぼ全ての物が“直線”と“曲線”の組み合わせで構成されていることにお気付きでしょうか?どの“もの”にも作り手がいて消費者の求めるフォルムを追い求め今の形が世に送り出されたわけです。歪みのない真っ直ぐな直線、美しい弧を描く曲線。今の世の中では当たり前ですが一昔前ならどうでしょうか。例えば、まだ定規などの道具を使って直線を書くという概念が無く、一生懸命真っ直ぐな線をフリーハンドで書いている時代に突然定規を使って真っ直ぐな線を描く人物が現れたらどうなるでしょう。“たかが直線”ですが周囲の人々の目は釘付けになってしまうでしょう。定規やコンパスなどを使って描いた直線や曲線は脳が本能的に美しいと定義する理想的なモデルなのです。この理想的なモデルが当たり前に取り入れられている現代で未だに未参入の分野があったとしたらそれは大きなビジネスチャンスということになります。私にとってそれが“ネイル”でした。
理想を具現化するためのツール
私がネイルという世界に初めて触れたとき、ネイルアーティストの方々はほとんどが女性でした。そして“いかに筆で美しいものを描けるか”というところに重点が置かれている業界であると認識しました。私自身、絵を描くことが好きですし、素晴らしい仕事だなと感じました。その反面、曲線や直線をフリーハンドで描くことに疑問を抱いたのも事実です。というのも、我々世代以上の男性のほとんどが幼少期に“プラモデル”などの模型制作に没頭したことがあるはずです。模型を塗装する際には直線や曲線はマスキングを駆使してスプレーで美しく、そして筆の方が味が出る部分はフリーハンドで描く、これが当たり前の世界でした。そこで私がネイルという分野に飛び込んだ時に真っ先に取り入れたツールが“エアーブラシ”でした。直線には定規、曲線にはコンパスを使用するようにエアーブラシとマスキングテープを駆使してネイルにも応用すれば人間が本能的に美しいと感じる理想的なラインをいとも簡単に描くことが出来るからです。
ネイルにおける需給ギャップにスポットを―成功への最短ルート
当時もネイルアートにエアーブラシは使用されていましたが“グラデーション”や“ステンシルシートを利用したデザイン”などがメインで男性である私の視点から見た“エアーブラシが真価を発揮するデザイン”はネイル業界ではフリーハンドで描くことが主流でした。前述した通り我々は理想曲線と理想直線に囲まれて生活しているため誰しも理想的な直線、曲線が無意識に 脳にインプットされているのです。これを踏まえた上でネイルアートのフレンチやボーダー、チェックに置き換えれば、フリーハンドで描くことが当たり前であった場合、0.01ミリ程度の歪みはお客様にとっても許容範囲で何も感じないのかもしれません。しかし理想的なモデルが脳に刷り込まれているため人間は無意識に妥協しているのです。理想的なラインは身の回りにあふれているためユーザーのニーズ(需要)はあります。しかしそれをマシンクオリティで提供(供給)することにそこまでスポットが当てられていませんでした。つまり需要にたいして供給が追いついていない“需給ギャップ”が生じていたわけです。この需給ギャップを解消することで人間が本能的に求めるものを提供出来たことになりさらなる“価値”が生まれます。ネイル業界のみならずあらゆる分野のビジネスにおいて需給ギャップにスポットをあてることが成功への最短ルートといっても過言ではありません。
大塚翔太(3D Attacker)
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