”見せない”ことで見えてくる可能性



人間の脳には脳内補完という機能があり物体の一部が見えていれば、見えない部分を過去の記憶、経験などの予備知識から自動で補うことが出来ます。例えば、上の写真で額縁はほとんど写っておらず、ほんの一部、緑の木枠が写っているだけですが緑の額縁で囲まれているということは脳内補完によって認識させられているはずです。また、全く未知の見えない部分がある場合本能的に”見たい”という気持ちから脳は無意識に理想的なモデルを構築し様々な想像、期待が生まれます。例えば、サングラスをかけた美女がいた場合目は見えていないわけですから髪型、スタイルなど、それ以外の情報から美女と判断したわけです。つまり脳は無意識にサングラスを外した時の顔を想像し期待値を高めているわけです。この脳内補完を利用して爪という小さなアートパレットに置き換えて考えた場合無限大の可能性を見いだすことが出来ます。





脳内補完を応用して”面”ではなく”点”で捉える



爪という小さなアートパレットにおいて”最小限のアートにして最大限のアイキャッチ”という理想的なモデルに近づけるための効果的な方法の一つが”点で捉える”という概念。写真のユニオンジャックのデザインを例に解説します。”面で捉える”という視点とは爪の中心にデザインの中心を合わせ全体像を描こうとすること。つまりそのまま描き写すということです。こうすると全体像ははっきりとわかりますが爪という小さなパレットの中で作品は完結してしまいます。それに対して”点で捉える”という視点では全体を描こうとするのではなくデザインをピンポイントで抜き出し描画します。中心をずらし一部分のみをクローズアップして描きデザインの全体像をあえて”見せない”ことでその延長上にあるデザインの続きを脳内補完によって想像させることが出来ます。こうすることによって作品は爪という小さなパレット内に留まること無く無限大の広がりを見せてくれるのです。





”サンプル”ではなく”作品”を残す



ネイルを施術した後作品を撮影する方が多いと思います。撮影の際に手をしっかり揃えて10本の爪全てが写るように全体像を捉えれば”デザインサンプル”としては問題ありませんが”アート作品”としては動きの無い味気ないものになってしまいます。これに対して”アート作品”として写真をしたい場合に”見せない”ことは絶大な効果を発揮してくれます。上の写真ではしっかりと写っている爪はたったの2本しかなく残りの8本はほとんど写っていませんが、我々人間の脳は脳内補完によって無意識に見えていない指を補おうとします。つまり、写真という小さな枠に収まることなくその先に無限大に広がりを再現出来るのです。さらには人間の脳は想像の部分を美化する傾向にあるため作品は無意識のうちにより美しいものとして捉えられるのです。あえて”見せない”ということはあらゆる分野で人間の脳に良い刺激をもたらしてくれるといっても過言ではありません。

大塚翔太(3D Attacker)





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