実は日本で生まれたネイルテクニック“グラデーション”
Calgelのコースは最初「初心者向け」と「プロ向け」の2つのみでした。溶液で落ちるジェルというものが他になく、受講者の皆様には材料学からお教えしていた時代ですから、今よりも受講時間は倍ほどありました。それでも熱心な受講者に多くお越しいただくようになり、また受講生のリクエストによるセミナーもどんどん増えていきました。日本で生まれた代表的なテクニックが「グラデーション」。Calgelを使ってイギリスで施術していた時、まずジェルを爪の上でぼかすという概念がありませんでした。顧客からのリクエストもなく、せいぜいアートで花にぼかしを入れるくらい。たまにクリアジェルでスカルプチュアを作ってお見せしても「興味深いけれど、私はいいわ」と、とことんコンサバで王道な「単色」や「フレンチ」が好まれていたのでした。ですから日本でサロンワークし始めたとき、お客様から何気なく「グラデーションで」と言われた時には、すごく違和感がありました。「えっ、爪にグラデーションって、変じゃない?」って。私も頭がイギリス人になっていたのですね。
ナチュラルさが出せるカルジェルとハードジェルとの違いとは?
これはある程度は想像できていたことですが、「ハードジェル」との違いをわかっていただくのには若干時間がかかったように思います。「ハードジェル」とは、もともとはアクリリックシステムの最後の「磨き」の手間を少なくしようと開発されました。塗るだけで自然にセルフレベリングし凹凸を埋め、UVで硬化したあと未硬化ジェルを拭き取ればガラスのような美しいツヤが出るシステムです。アクリリックシステムのように長さ出しや盛り上げにも適していますし、堅牢で溶液にはほとんど侵食されません。当時、日本ではこのハードジェルが流行していましたから、ジェルといえば自動的に「ハードジェル」を指していました。Calgelはもともと、ネイルカラーのように気軽に塗って、とりたい時には溶液でオフできるシステムとして開発されました。ですから薄付きで使っていただくことで魅力を発揮できるのです。しかしハードジェルに慣れていると、つい盛り上げ過ぎたり、長さを出しすぎたり・・・。「フォームを付けるなら、ある程度長さを出さないといけない」と思い込んでいた私自身が、かつて同じことをしていました。しかしラッキーなことに、ちょうどその時日本ではロングネイルのみでなく、自然な長さのショートネイルも流行り始めました。その波に上手く乗れたCalgelは「ナチュラルルッキング」なジェルとして数多くのサロンで使っていただけるようになったのです。
サロンワークスタイルのコンペティション優勝と大切な出会い
サロンワークやCalgel講習がだいぶ軌道に乗り始めた頃、とあるジェルメーカー主催のサロンワークスタイルジェルネイルコンペティションが開催されるというので、早速エントリーしてみました。片手5本を前もって仕上げておいて、会場でもう片手を仕上げるとのこと。絵具でアートしても3Dを作っても、ジェルがベースで時間内に収まるならなんでもOKとのことでした。なかなか自由でいい感じです。東京在住のいとこにモデルをお願いして、当日仕事を抜けて行ってまいりました。日本で初めてのコンペティションです。硬化が速いクリアジェルを使って、ジェルでオーバルのスカルプチュアを作ります。ホワイトとパープルでレースやフラワーを描き、クリアジェルでコーティング。そしてジェルをコーンに入れて絞り出したレース風の3D蝶を薬指にあしらいました。これは当時サロンワークで人気だったデザインです。カルジェルがネイル誌に登場できたのは、このコンペティションで優勝したあとで編集部の方に取材していただいたから。「溶液でオフできる爪に優しいジェル」だけでなく、カルジェルはこのあと「フラットも3Dアートも出来るジェル」として、様々な作品作りに役立ってくれることとなります。
田賀 美鈴(MOGA・BROOK)