初めてのネイルサロン



ネイルアートを気に入ってくださったご近所様に紹介してもらったサロンは、当時住んでいた家から自転車で20分ほどの場所にありました。早速訪れてみると、そこはエステとネイルをメインで行うビューティーサロンでした。サロンのボスいわく、この町ではほとんどのお客様が単色塗りかフレンチをリクエストされるとのこと。アートは珍しいのでお客様がきっと興味を持ってくれるはずと、週末にアルバイトさせてもらえることになりました。当時はまだネイルテクニシャンとしての訓練を受けていなかったので、先輩が仕上げたカラーやフレンチの上に、アクリル絵具でアートを描くことからお仕事が始まりました。





美しいネイルは大人の女性の身だしなみ



当時の女性にとって「ネイルは身だしなみ」。先輩たちやお客様には「自然な美しさを保つのが大人の女性のステイタス」だと教わりました。ではネイルアートは果たしてお客様たちに受け入れてもらえるのでしょうか・・・。まずは見ていただくことが大事と、先輩たちのネイルにアートを描かせてもらいました。フレンチや単色塗りのレッドを引き立たせるような小花アートがメインです。ハンカチのフチについているレースみたいに、アートはあくまで爪の引き立て役、というイメージにこだわりました。すると「爪に絵はちょっと・・・」とためらっていたお客様も「これなら小指の爪に」と、少しずつアートを試していただけるようになりました。





リクエストは技術を磨く宝物



突然にやってきた「爪に絵を描く日本人」を、温かく見守ってくださったサロンのお客様のことはいまでも鮮明に覚えています。小花などの控えめなアートが圧倒的に人気でしたが、ユニークなリクエストを出すのを楽しみに来店するお客様も増えました。Aさんは座るなり「Outrageous, non conservative(奇抜で、保守的じゃないアート)」と一言。Pさんは「10本の爪に全部違うお花」、Eさんは自分が飼っている「双子のウェストホワイトハイランドテリアを描き分けて」、Gさんは「私の部屋のカーテンについているレースの模様を」。難しいアートもありましたが、「あなたなら描けるでしょう」と思ってくださっているからこそのリクエスト。お客様がずっとリクエストを出し続けられるように、もっともっと技術を磨いていこうと思ったものです。
田賀 美鈴(MOGA・BROOK)





 記事に関連するキーワード


この記事を書いた人